人事事務とは - 人事事務の仕事内容、給料事情、メリット、やりがいまで徹底解説
マイナビキャリレーション編集部人事事務とは、採用、労務管理、給与支払いなど、人事部が担当する仕事を、書類作成や手続き業務などを通してサポートする仕事です。求人では、人事アシスタント、労務事務という名前で募集されることもあります。
昨今、「働き方改革」「HRテック」などといったキーワードが流行し、人事事務、人事アシスタント、労務事務といった人事専門の事務職も、非常にやりがいのある仕事として、注目されています。
本記事では、人事という仕事の基礎知識から、人事事務の具体的な仕事内容、給料事情、メリット・やりがいまで幅広く紹介していきます。人事の仕事に興味がある人はぜひ最後までお読みください。
目次
人事事務を知る前に知っておくべき人事部の仕事
人事事務、人事アシスタント、労務事務という仕事に就くと、基本的には人事部で働くことになります。ゆえに、人事部という部署が、会社の中でどのような役割を持ち、どのような価値を発揮するものなのかを知っておくことは、人事事務として働くうえではもちろん、採用面接での受け答えでも、とても重要なポイントになります。そこでまずは、人事部の仕事の概要を5つの役割に分けて説明していきましょう。
1. 人事企画
会社は「ヒト」「モノ」「カネ」で成り立っているとよく言われます。ヒトは社員、モノは設備、カネは資金のこと。人事企画は会社の目的を達成するために、ヒトをどのように活用するかを考え、計画する仕事です。例えば、将来にわたってどのような社員を何人採用し、会社の社員数を何人にするのかを考える「採用計画の立案」や、仕事をスムーズに行うためにどのように人材を配置するのかを決める「部門構成・人材配置の計画」といった仕事がこれにあたります。ヒトというものに対して会社がどのような方針で行動するのかを決める仕事と言い換えてもいいでしょう。
2. 採用・雇用
人事部がもっとも表立って働くのが採用・雇用の仕事です。採用計画に基づいて社員を募集し、採用・不採用の判断にも関わります。また、優秀な人材に応募してもらうために、会社の魅力を発信していくのも人事の重要な仕事です。就職・転職イベントへの参加や企画といったオフラインのコミュニケーションはもちろん、最近では自分の会社のWebサイトで会社の雰囲気や働く人の声を紹介したり、SNSなどを使って就職・転職希望者とコミュニケーションを取る会社も増えてきています。
3. 労務管理
労務管理は、現在、会社で働いている人に対しての仕事と考えるとわかりやすいはずです。具体的な仕事としては、雇用契約、給与計算・支払い、勤怠管理、社会保険手続き、福利厚生などが挙げられます。例えば、社員は会社から働いた分の給料を受け取る権利があります。休みを取る権利もあります。一方で、契約どおりに出社し、給料の中から税金や保険料を納める義務があります。こういった社員の権利や義務を管理し、社員が働きやすいように運用していくのが労務管理の仕事です。
4. 教育・育成
採用した人材は放置しておけば成長していくというわけではありません。新卒で採用した社員には新入社員研修を受けてもらい、社会人としてのマナーや自分の会社や業界に関する知識を教えてあげる必要があるでしょう。管理職になる人に対しては、プレイヤーからマネージャーへの意識転換を図るための、管理職研修を用意している会社が一般的です。こういった社員の成長を促すための研修を企画するのも人事の仕事です。また、面談やアンケートなどを通して、キャリアパスに対する希望をくみ取り、配置転換の検討や実施なども行います。
5. 制度・環境の整備
社員が働きたくなる会社を作るための仕事が、制度・環境の整備です。もっともわかりやすいのが評価・報酬制度に関する仕事でしょう。社員が生き生きと働くためには、労働に対する適切な評価と報酬が欠かせません。どんなに働いても評価を受けられず給料も安い会社からは、人はすぐに去ってしまいます。できるだけ多くの人が納得して働ける評価・報酬制度が会社には必要です。そのほか、福利厚生施設の運用、セクハラ・パワハラなどがない環境の実現、近年ではダイバーシティの実現なども人事の仕事です。
人事事務の仕事は労務管理にかかわるものが中心
会社におけるヒトに対する仕事を幅広く請け負っている人事部ですが、人事事務、人事アシスタント、労務事務として働くときには、多くの場合、労務管理にかかわる仕事を担当すると考えるといいでしょう。人事企画の仕事で資料の作成を手伝ったり、採用・雇用関連の仕事で、求職者のアテンドや問い合わせ対応、イベントのサポートをしたりすることもありますが、これらはサブの業務となるのが一般的です。
そこでここからは、労務管理の仕事における、人事事務、人事アシスタントの実際の仕事内容を紹介していきます。
入社手続き
社員に入社してもらうためにはさまざまな手続きが発生します。まずは労働条件の通知。勤務時間や給与、勤務地などを記載した労働条件通知書を発行して、入社予定の人の同意を取らなければなりません。また、労働契約書・雇用契約書によって雇用契約を結ぶ必要もあります。これらの書類を作成するのが人事事務の仕事です。
また、新入社員の社会保険や労働保険の加入手続きも人事事務が担当するのが一般的です。社会保険のなかでも、健康保険、厚生年金保険の手続きは、入社日から5日以内に済ませなければならず、労働保険の一種である雇用保険の手続きは、翌月の10日までに済ませなければなりません。これらの手続きには入社する本人からの書類提出が必要になるため、採用を活発に行っている会社では必要書類を集めて整理するだけでも大変な仕事になります。
退職手続き
社員が退職する際には、入社時と逆に社会保険(健康保険、厚生年金保険)や労働保険(雇用保険)の資格喪失手続きを行わなければなりません。健康保険と厚生年金保険は退職日から5日以内に手続きを済ませなければならず、雇用保険は退職日から10日以内の手続きが必要です。入社時の手続きと同様、スケジュールに追われる仕事になるでしょう。また、退職にあたっての給与計算、退職金の計算、所得税、住民税の計算といった、通常の給与計算とは異なる、お金に関する仕事も発生します。
給与計算・支払い
社員の毎月の給与計算・支払いは人事事務の重要な仕事のひとつです。給与計算・支払いの仕事は、おおむね以下のような流れになっており、25日や月末といった給料日に合わせて、毎月繰り返し行うことになります。また、ボーナスがある月には賞与計算、12月には年末調整といった特殊な給与計算にかかわる業務にも携わります。
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- 勤怠・賃金・個人情報の収集と変更
- 給与計算のもととなる勤務日数、残業時間などの収集のほか、昇給・降格などで賃金が変更された人がいる場合は基本給の変更、さらに結婚や引越しなどで、扶養家族が増えたり、住所が変わったりした場合には、その情報の変更も行います。
- 支給額の計算
- 勤怠・賃金情報からベースとなる給与が決まるので、税金や社会保険料などの金額を計算・控除して実際の支給額を算出します。
- 給与明細の作成
- 基本給、時間外手当、社会保険料、所得税、支給額などが記載された給与明細を、支給額の計算結果をもとに作成します。
- 給与の振込み
- 銀行に対して給与の振込手続きを行います。通常は社員全員の振込情報を銀行に送り、一斉に振込手続きを済ませます。
- 社会保険料・税金の納付
- 給与の振込みが終わったら、給与から控除した社会保険料と税金の納付手続きを行います。社会保険料は前月分の保険料を月末までに納めなければなりません。税金(所得税・住民税)は、給与を支払った月の翌月の10日までに納付します。
社員情報の管理
会社で働いている社員の情報を管理するのも人事事務の大切な仕事です。多くの会社では、社員の情報を社員台帳・社員名簿という形で一括管理しています。その中には、社員の氏名、年齢はもちろん、住所や連絡先、配偶者の有無、職歴などが登録されています。しかし、これらの情報は時間がたつと変更をしなければなりません。引越しによって住所や連絡先が変わることもあるでしょうし、結婚して氏名が変わることもあるでしょう。このような個人情報を社員からの申請を受け、適切に更新していくわけです。
ここまで、人事事務の主な仕事を紹介してきました。これらの仕事にはいくつかの共通点があることに気づいたでしょうか。ひとつ目は紙の書類を扱う仕事が多いこと。入社時の労働条件通知書や雇用契約書は紙で発行するのが一般的ですし、社会保険、税金に関する手続きもほとんどが紙の書類を提出して行われます。これらの書類には間違いや不備が許されません。スムーズに仕事をこなしていくには、作業の正確性が強く求められます。
ふたつ目は社員の協力を必要とする仕事が多いこと。雇用契約の締結には契約書への署名捺印が必要になりますし、給与計算に使用する勤怠情報には、各社員の正確な情報入力・申請が欠かせません。社員情報を最新のものに更新していくためには、各社員がそのつど正しく申請をする必要があります。しかし、これらの申請業務を面倒に感じ、締切りを守ってくれない社員もたくさんいます。快く協力してもらうためのコミュニケーション能力も必要となるでしょう。
3つ目は締切りが決まっている仕事が多いことです。給料は毎月決まった日に振り込まなかければなりませんし、社会保険の手続きや社会保険料、税金の納付にも締切りが設定されています。人事事務として活躍するためには、作業のスピード、スケジュール管理能力は必須といえるかもしれません。
下記に、人事事務の業務全般をまとめました。上記の労務管理部分は重複していますが、ざっと一覧で見たい時など、ぜひご活用ください。
人事事務の主な仕事リスト
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人事企画業務
採用計画や部門の構成・人材配置の計画を立案する際に必要となるデータの収集や資料の作成を任される場合があります。
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採用・雇用業務
面接に来た求職者の案内、面接の日程調整、採用・不採用通知の作成・送付、転職・就職イベントのサポートなどを行います。求人情報誌・Webサイトなどに掲載される求人情報の原稿作成や、その担当者とのやり取りを任せられることもあります。
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入社手続き
新入社員の雇用契約の締結や社会保険、労働保険の加入手続きなどを行います。
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退職手続き
退職者の社会保険、労働保険の資格喪失手続きや、給与、退職金の計算などを行います。
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給与計算・支払い
勤怠・賃金情報などを収集したうえで給与を計算し、決まった日までに給与の振込みを行います。給与の振込後は社会保険料と税金の納付を行います。ボーナスが発生する月には賞与計算が、12月には年末調整の業務が発生します。
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社員情報の管理
社員が引越しをしたり結婚をしたりした際に、社員の申請を受けて社員台帳・社員名簿などに記載されている情報を更新します。
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教育・育成業務
各種研修に使用する資料の作成や当日のサポートを行います。研修を外部に依頼している場合は、研修を依頼する会社の情報収集や担当者とのやり取りを担当することもあります。
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制度・環境の整備
制度変更が行われたときには、メールや掲示物などを使用した、社内への広報業務を行うことがあります。
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電話・メール応対
外部から人事部にかかってきた電話は人事事務の人が応対するのが一般的です。担当者への取り次ぎだけでなく、簡単な問い合わせであれば直接回答することもあります。また、社内からの各種手続きに関する問い合わせも多々あります。
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来客応対
会社に来客があった際に、待合スペースや会議スペースに案内する仕事です。飲み物を出したり、会議室の準備をしたりすることもあります。
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その他
備品の管理・発注や郵便物の発送・仕分けなどといった、一般的な事務職が担当する仕事です。
人事事務の給料はどのくらい?年収、月収、時給をチェック
作業の正確性・スピードや高いコミュニケーション能力、スケジュール管理能力を求められるのが人事事務という仕事。どの程度の給料を得られるのが一般的なのでしょうか。続いては、人事事務の給料事情について見ていきましょう。マイナビキャリレーションを運営する私たちマイナビワークスが保有している膨大な求人データから、人事事務の平均年収、平均月収、平均時給を割り出してみました(2017.12.20時点)。
人事事務の平均時給は1,526円となりました。1日8時間勤務だとすると日給は12,200程度になります。アルバイト・パートや派遣社員といった時給制の雇用形態で人事事務の仕事を探している人は覚えてくといいでしょう。平均月収は22万5,211円、平均年収は329万7,794円となっています。これは他の事務職と比べると、やや高めといっていい水準です。給与計算や社会保険、税金の手続きなど、特殊な知識が求められる仕事をする分、会社からも高い評価を得られるのかもしれません。
また、人事事務に関する資格に「社会保険労務士(社労士)」という国家資格があります。これは労務管理のスペシャリストであることを示す資格です。この資格を持っておけば、採用時に有利なるほか、給与面での優遇も期待できるでしょう。
1日の流れをチェックして人事事務の仕事をイメージ
ここからは、人事事務、人事アシスタントとして実際に働いている人の1日を追いながら、人事事務の仕事をさらに深堀していきます。現場の仕事の流れを理解しておけば、入社後に仕事に馴染むのが早くなるはずですし、面接での受け答えに具体性が出て評価が高まるかもしれません。未経験から人事事務の仕事を始めた人のお話を聞いてきたので、紹介しましょう。
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8:30|出社
朝は始業の30分前に出社。消耗品がなくなっていないかを確認して、必要に応じて補充します。そのあとは、出勤途中に買ってきたコーヒーとサンドイッチで朝食を取りながらメールチェックやその日の仕事の確認。ほかの社員が出社する前に仕事に入る心の準備をしておきます。
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9:00|始業
始業時刻は9時で、すぐに朝礼が始まります。朝礼が終わったらすぐに取り掛かるのが労務関係の仕事。そのときどきでする仕事は違うのですが、入社する人がいる場合は入社に関する手続きや書類の整理をしたり、月末・月初はパソコンに向かって給与計算ソフトの情報の入力・チェックしていたりします。そのほか、提出が遅れている書類の催促や、提出された書類の内容のチェックもできるだけ早い時間帯に行っています。
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12:00|休憩
実家に住んでいるので、昼食は母親が作ったお弁当を自分の席で食べます。社会保険労務士(社労士)の資格を取るつもりということで、ご飯を食べながら参考書でお勉強。
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13:00|午後の業務開始
入社手続きや給与計算の仕事は、月末・月初にまとまって発生するので、午前中の仕事を午後も引き続き行っていることが多いです。ただし、午後からは採用関連の仕事が増えてきます。面接に来た人の案内をしたり、求人サイトに掲載される原稿の作成をしたりが主な仕事。面接に来た人、なかでも若い人は緊張していることが多いので、できるだけ笑顔でフランクに接するように心掛けます。
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17:45|業務終了
書類仕事をこなしていたり、社員からの問い合わせに答えていると、あっという間に夕方になり、業務終了です。退社の15分くらい前にはその日の仕事を切り上げてしまい、次の日の仕事の確認に時間を取ります。
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18:00|退社
18時が終業時刻なので、デスクの上を整理したら、基本的には定時に退社します。最近は、帰りの電車では参考書を開いて社会保険労務士(社労士)の勉強をするようにしています。
人事事務で働くメリットとやりがい
人事部という会社のヒトに関する仕事を一手に引き受けている部署で、労務管理の手続き業務を中心に仕事をするのが人事事務、人事アシスタントです。それでは人事事務で働く人たちは何に魅力を感じ、どのようなやりがいを持って、日々仕事をしているのでしょうか。最後に人事事務として働くことのメリットとやりがいを紹介していきましょう。転職や就職の応募をする前に、自分に向いているのか、将来なりたい姿と合致しているかをチェックしてみてください。
残業少なめ、未経験でもチャレンジしやすい
他の事務職と同じく、人事事務の仕事も残業をしなければならないケースはそこまで多くないかもしれません。月末・月初は業務が立て込んで忙しくなりますが、基本的には毎月のルーチンワークなので、しっかりとスケジュールを組んで仕事をしていれば、負担もさほど大きくはなりません。ワークライフバランスを取りやすいので、趣味の時間を大切にしたい人、家事や育児に力を入れたい人には向いている職種のひとつといえます。
また、人事事務の仕事をするために必要な資格は存在しません。人と接することが多い仕事なので、接客や販売の仕事をしていた人なら、すぐになじむことができるでしょう。社会保険や税金にかかわる仕事には専門的な知識を求められますが、それも仕事を始めてから覚えていけばOK。エクセルやワードを使えるといった、基本的なPCスキルさえ持っていれば、十分に即戦力として活躍できます。
人事のプロフェッショナルにキャリアアップできる
人事事務で、採用・雇用、労務管理の仕事をしていると、とても多くの専門用語や法律に触れることになります。入社直後はなじむのに苦労をするかもしれません。しかし、それらの専門用語や、労働、雇用、社会保険などに関する法律の知識はすべて人事の仕事をするうえで欠かすことができないもの。つまり、人事事務での経験自体が、人事のプロフェッショナルへの近道になっているのです。将来的に人事の仕事をしていきたい人には、入り口としては最適な職種といえるでしょう。
また、人事事務の仕事をしながら覚えた知識は、「社会保険労務士(社労士)」という国家資格の取得にも大いに役立ちます。資格を取って安定した収入を得ていきたいと考えている人にも、人事事務はぴったりの仕事です。社会保険労務士の資格を持っていれば、転職・就職の際に有利になるほか、社会保険事務所で働くというキャリアも生まれてきます。
まとめ - 人事は今、旬な仕事
「働き方改革」という言葉を聞いたことがない人はまずいないでしょう。仕事の効率化や多様な働き方の実現によって、ワークライフバランスの取れた働きやすい環境を作るというのがその主な目的です。そしてこの働き方改革を主導しているのが人事部です。
また近年、人事の仕事に対してAI(人工知能)やITを積極的に導入していこうという動きが活発化し、非常に注目されています。人事にかかわる最新のテクノロジーを「HRテック」といい、HRテックの力で人事の仕事が大きく変貌を遂げようとしている時期でもあります。今後、人事という仕事は会社の中でますます重要性を増していくことでしょう。
人事事務で仕事をすることは、人事というまさに旬の仕事で、活躍の場を見つけるための大きなチャンスといえます。人事の仕事に興味がある人、オフィスワークでキャリアを積んでいきたいと考えている人は、ぜひ積極的にチャレンジしてみてください。