貿易事務とは - 貿易事務の仕事内容、給料事情、メリット、やりがいまで徹底解説
マイナビキャリレーション編集部貿易事務とは、貿易(輸出・輸入)に関わる企業(商社やメーカーなど)で働く事務職・ポジションのことを指します。ほかの事務職より、専門性が高く、専門知識と語学力を駆使して、主体的に貿易実務を動かしていく重要な仕事です。
みなさんは貿易事務という言葉を聞いて、どのような印象をお持ちでしょうか。もしかすると、「貿易会社で働いている事務員」といった程度のものかもしれません。しかし、そのような漠然としたイメージで、貿易事務を目指して転職・就職活動をするとなると、失敗してしまう可能性が高くなってしまいます。
したがって本記事では、貿易事務の仕事内容から収入、やりがいとメリットまで幅広く紹介しつつ、貿易事務への転職・就職を考えている人、貿易事務に少しでも興味がある人に、少しでもその重要性をお伝えできればと思います。ぜひ参考にしてみてください。
目次
専門知識と語学力を活かして輸出・輸入の現場を支える貿易事務
書類の作成や申請・手続きといった仕事を通して、ほかの社員のサポートをするのが、ほとんどの事務職の役割となっています。そんな事務職の中で、特殊な地位を築いているのが「貿易事務」という仕事です。社内で書類作成や申請・手続きを行うという点では、ほかの事務職と同じなのですが、その内容はサポートではなく、むしろ輸出・輸入の現場の最前線といえるかもしれません。貿易事務とはどのような仕事をする職種なのか、代表的な仕事内容を見ていきましょう。
貿易書類の作成・確認
国内で行われる商品やサービスの取引きに比べて、海外との商品やサービスの取引き、つまり貿易には高いリスクが伴います。文化や商習慣の違いから、商品の納入や代金の支払いがうまくいかなかったり、長距離の輸送が必要となるため、輸送中の事故の危険性が高まったりするからです。
そこで必要になるのが、数多くの書類の作成と手続きです。取引きをする商品・サービスの数量、価格、取引きの条件などを書類という形で証拠に残し、その書類を正確な手順でやり取りすることで、リスクをできる限り抑えて、スムーズな取引きを実現するのです。
輸出・輸入に関連する書類は一般的に「貿易書類」と呼ばれます。輸出する品物の品名や種類、数量、価格、代金支払い方法などが明記された「インボイス(Invoice・商業送り状)」、輸出する貨物の個数や重量、容積などが記載された「パッキングリスト(Packing list・梱包明細書)、貨物の引渡しに必要となる「船荷証券(B/L・Bill of Lading)」がその代表例。そのほか、「信用状(L/C・Letter of Credit)」「為替手形(Bill of Exchange)」といった代金の支払い・回収に関連するものなど、さまざまな書類が存在します。
これらの数多くの書類の作成や内容確認、送付などを行うのが貿易事務です。正確に書類を作成し、関係者とやり取りするためには、内容をきちんと理解できるだけの専門知識が求められます。また、貿易書類の多くは英語で書かれているため、英文書類を理解・作成できる程度の英語力が必要になります。
出荷・輸送・通関等の手配
貿易事務の仕事に就くと、輸出・輸入に伴う品物の輸送業務にも関わることになります。家電製品や自動車など、工業製品を製造しているメーカーで輸出に関する貿易事務をするなら、工場への出荷依頼、工場から海外まで貨物を運ぶための、トラック、船、飛行機などの手配、貨物を海外に持ち出す許可を得るための輸出通関の手配などを担当することが多いでしょう。
一方、資源や農産物などの輸入をしている会社で働く場合は、海外の輸出業者や生産者への発注手続き、貨物を国内に持ち込む許可を得るための輸入通関の手配、港や空港から品物をお客様に届けるための、倉庫や輸送手段の手配といった業務が発生します。
輸出・輸入の際の品物の輸送には、とても多くの会社がかかわることになります。トラブルなく、お客様まで品物を届けるには、実務の正確さと高いコミュニケーション能力が必要。また、海外の会社とのやり取りには、基本的に英語が使用されています。英文のメールを読み書きできる程度の英語力は最低限として、場合によっては英語でビジネス会話ができるくらいの英会話スキルも必要となるでしょう。ちなみに海外の取引先と外国語でメールや電話のやり取りをすることを「コレポン」「コレポン業務」と呼びます。
出荷・納入管理
貿易事務の仕事は、貿易書類を作成して、輸送や通関の手配をするだけではありません。注文を受けた品物の量や納期のデータをパソコンに入力したり、自社の工場や倉庫にある在庫量をチェックしたりして、品物がお客様のもとに確実に届くように管理するのも、貿易事務の大切な仕事です。天候の影響などによって、輸送が遅れたりした場合は、スケジュールの調整や代替案の提案などを行うこともあります。
貿易事務の主な仕事リスト
貿易事務の主な仕事内容は、上記の通りですが、ほかの事務業務も含めて下記にも一覧を記載しました。必要な時に見返したりと、ぜひ参考にしてみてください。
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貿易書類の作成・処理
「インボイス」「パッキングリスト」「船荷証券」「信用状」などといった、輸出・輸入に必要となる書類の作成や内容確認、送付をする仕事です。貿易書類の多くは英語で作成されているため、正確に仕事をこなすためには、英文書類を読み書きできる程度の英語力が必要になります。
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輸送手配
輸出・輸入をする貨物を運ぶための輸送手段を準備するのも貿易事務の仕事です。運送業者、海運業者、倉庫業者などと連絡をとり、品物が注文通りにお客様に届くように手配をします。メーカーや商社では、貨物の輸送手配を一括で引き受けてくれるフォワーダーと呼ばれる会社に依頼するのが一般的です。
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通関手配
税関に対して輸出・輸入の申告をし、許可を得ることを「通関」「通関手続き」といいます。メーカーや商社では、フォワーダー、海貨業者、倉庫業者などといった、通関実務を代行してくれる会社に依頼することが多いようです。
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出荷・納品管理
国内外のお客様に品物が確実に届くように、出荷依頼、在庫確認、発注、スケジュール調整などを行います。海外のお客様や取引先とのコミュニケーションが必要な職場で働く場合は、英文メールの読み書きや英会話のスキルを求められます。
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電話・メール応対
貿易事務の仕事では、電話やメールによる、取引先とのやり取りがたくさん発生します。国内のお客様からの注文や問い合わせであったり、海外の取引先への発注であったり、その内容はさまざま。ビジネスマナーを守り、適切に対応しなければなりません。海外とのやり取りには英語が使われるのが一般的です。
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来客応対
会社に来客があった際に、待合スペースや会議スペースに案内する仕事です。飲み物を出したり、会議室の準備をしたりすることもあります。
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その他
郵便物の発送・仕分け、備品の管理・発注といった一般的な事務職が行う仕事を、貿易事務の人が担当することもあります。
補足 - 貿易事務が活躍できるのはどんな会社?
貿易事務の仕事は、輸出・輸入にかかわっている会社に欠かすことができないものです。そのため、貿易事務が活躍できるフィールドは非常に幅広いといえるでしょう。商品を製造するメーカー、商品の輸出・輸入の仲立ちをする商社、貨物の輸送コーディネイトや輸送そのものを請け負うフォワーダー、物流業者などが、主な転職・就職先の例。ただし、働く会社によって中心となる仕事は違うので、転職・就職活動の際には、貿易事務という言葉だけに注目するのではなく、詳しい仕事内容を確認することが大切です。
貿易事務の給料はどのくらい?年収、月収、時給をチェック
専門的な知識や英語力が求められる貿易事務という仕事。社会的評価も比較的高く、やりがいが大きな仕事の1つとなっています。それでは会社からの自分の評価、つまり給料の水準はどのようになっているのでしょうか。高い専門性を求められる職種であるだけに、高収入を期待したいところです。
そこで、マイナビキャリレーションを運営する私たちマイナビワークスが保有している膨大な求人データから、貿易事務の平均年収、平均月収、平均時給を割り出してみました(2024.11.11時点)。貿易事務の収入の実態を見てみましょう。
貿易事務の平均時給は1,621円。ほかの事務職と比べるとかなりの高水準となっています。貿易に関する専門知識や英語力が求められる分、時給も高めに設定されているのでしょう。アルバイト・パートや派遣社員として働く際の参考にしてください。貿易事務の平均月収と平均年収は249,475円、3,865,321円となりました。こちらは事務職の平均的な金額、もしくはやや高めといった水準といえるでしょう。
ただし、ここに掲載した金額は、アルバイト・パート、派遣社員、契約社員、正社員といった雇用形態にかかわらず集計を行ったものです。正社員に限れば、年収の上限に500万円以上が設定されている貿易事務の求人も少なくありません。つまり、自身がスキルアップすることで高収入を望むことができる職種ということです。貿易事務は、収入の面でも働き甲斐のある仕事の1つといえるでしょう。
1日の流れをチェックして貿易事務の仕事をイメージ
貿易事務という仕事の概要と収入を把握できたら、続いては貿易事務の仕事をしている人が、毎日どのような業務をこなしているのかを具体的に見ていきましょう。ここでは、食品の輸入を主なビジネスとしている会社で貿易事務の仕事をしている人の1日の仕事の流れを追っていきます。
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8:50|出社
始業時刻が9時なので、その10分前には席についてパソコンの電源を入れ、9時ちょうどに仕事が始められるようにしておきます。ちなみに出社時刻は人それぞれで、同僚の中には8時半には席について仕事を始めている人もいます。
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9:00|始業
朝一番の仕事はメールのチェック。貿易事務の仕事は海外とのやり取りが多いので、時差の関係で夜中にたくさんのメールが届いていることが多々あります。溜まっているメールにまとめて回答をしていくわけです。FAXでやり取りしなければならない取引先もあるため、同時にFAXが届いていないかも確認します。
メールチェックが終わったら、海外向けの仕事を中心に済ませます。国内の取引先からの注文を取りまとめて、海外の取引先に見積依頼・発注をしたり、海外の取引先から届いた貿易書類の内容確認とファイリングをしたりします。 -
12:00|休憩
ランチはいつも社内で済ませます。お弁当は自分で作ったり、コンビニで買ってきたりとその日によってさまざま。社内にいたほうが急ぎの問い合わせなどにも対応できるので、安心だったりします。
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13:00|午後の業務開始
午後からは主に国内向けの業務を行います。港に貨物が届くと連絡が入るので、注文した内容と合っているかを確認したり、貨物の出庫や配送の手配をしたりします。また、お客様から急ぎの注文や問い合わせもあるので、メールや電話ですばやく対応していきます。
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15:00|社内業務
郵便物の発送・仕分けや書類のファイリング、伝票処理なども担当しています。お客様とのコミュニケーションよりも優先度が低くなるので、午後の遅い時間帯にまとめて済ませることが多いです。
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17:00|退社
トラブルや急ぎの仕事がなければ、定時で退社することができます。毎日の仕事をきちんとこなしていれば、ほとんど残業はありません。
貿易事務で働くメリットとやりがい
英語力を仕事の中で活かせる・伸ばせる
貿易事務という仕事の最大の特徴であり、メリット・やりがいともなるのが、英語を使った仕事がたくさんあるということです。英語での作成が必須になる貿易書類が多いほか、海外の取引先とのコミュニケーションは英語で行うのが一般的です。英語力を活かした仕事をしたいという人にはうってつけの職種といえるでしょう。
また、仕事の中で英語を多用するので、働きながら英語力に磨きをかけていくことも可能です。経済のグローバル化が猛スピードで進展している現在、英語を使って仕事をしてきた経験は非常に重宝されます。貿易事務で培った英語力は、外資系企業、IT企業など、さまざまな分野へのキャリアチェンジに役立つ可能性もあります。
臨機応変な対応の積み重ねでコミュニケーション能力が向上する
貿易事務の仕事には、非常に多くの人とのやり取りが必要になります。国内外の取引先との受発注に関する連絡はもちろん、貨物に保険をかけるために保険会社とのやり取りが発生する場合もありますし、代金の受取りに関しては銀行が介在するケースが多々あります。加えて、自分の会社内の各部署との連携も必要です。
このような多くの人がかかわる仕事をするうえで重要になるのは、相手の意思や要望を的確にくみ取り、整理して伝達する能力。つまり、コミュニケーション能力です。仕事をするうえで、必ず求められるスキルなので、貿易事務の業務をこなしていくことで自然とコミュニケーション能力が向上していきます。
専門知識を身に付けられるのでキャリアプランを立てやすい
貿易事務は専門的な知識と経験が求められる仕事です。貿易事務の仕事をスムーズにこなすには、貿易書類の書き方や確認方法のほか、輸出・輸入にかかわる商品とお金の流れ、法律に関する知識も習得しなければなりません。そのため、貿易事務の採用では、経験者が優遇される傾向があります。
逆にいえば、一度、貿易事務としての経験を積み、スキルを身に付けておけば、同じ業界でのキャリアアップや転職が容易になるということです。たとえ、出産・育児で長期間休暇をとることがあったとしても、仕事復帰をしやすい環境とも言えるでしょう。
まとめ - 貿易事務は英語力とコミュニケーション能力さえあれば未経験でも挑戦できる
何度も繰り返し書いてきたとおり、「貿易事務」は高い専門性を求められる仕事です。しかし、最初から貿易実務に関する専門的な知識や経験を持っている人はいません。誰もが最初は「未経験」。先輩社員のアシスタント業務から始めて、貿易実務に関する経験を積み、徐々に専門性を高めていくのです。
未経験から貿易事務の仕事に就くには、英語力とコミュニケーション能力の高さが重要です。もし、このページを読んで貿易事務の仕事に興味を持ったのであれば、履歴書や面接では英語力とコミュニケーション能力を存分にアピールしてください。また、貿易事務への転職・就職の際に有利に働く可能性がある、「貿易実務検定試験」という資格もあります。積極的に勉強して取得しておくといいでしょう。きっと、貿易事務への扉が開くはずです。