貿易事務に求められるスキル - 適性チェックリスト付き
マイナビキャリレーション編集部貿易事務ほど、個人のスキルや適性に対してシビアな事務職はないかもしれません。英語力や向上心の有無によって、向き・不向きがはっきりと出てしまう傾向にあるのです。このページでは貿易事務として活躍していくために必要なスキルと適性を徹底的に紹介していきます。「貿易事務にチャレンジしてみたいけど、自分にも務まるかな?」と疑問に思ったら、ぜひチェックしてみてください。
目次
- 自分は貿易事務に向いている?適性チェックリスト
- 貿易事務の適性チェックリスト
- 語学力やグローバル志向に関する適性
- 貿易実務に関する適性
- 仕事に対する考え方、キャリアに関わる適性
- 貿易事務として活躍するために欠かせないスキル・知識
- 英語を中心とした外国語の読み書き・会話
- 貿易実務に関する専門知識
- 貿易事務に求められる一般的なスキルレベル
- コミュニケーションスキル【求められるスキルレベル:5】
- PCスキル【求められるスキルレベル:3】
- 作業の正確性・スピード【求められるスキルレベル:3】
- スケジュール管理能力【求められるスキルレベル:4】
- 臨機応変な対応【求められるスキルレベル:4】
- キャリアアドバイザーから一言コメント - ワンランク上の貿易事務へ
自分は貿易事務に向いている?適性チェックリスト
まずは、自分の仕事に対する考え方や性格が、貿易事務という仕事に向いているのかをチェックしていきましょう。下に8つのチェック項目を並べました。当てはまる項目の数が多いほど、貿易事務という仕事に対してやりがいを感じて、イキイキと仕事をすることができるはずです。逆にひとつも当てはまらない人は、もしかすると貿易事務という仕事をするには不向きなのかもしれません。
貿易事務の適性チェックリスト
- 語学力を活かした仕事をしたい
- グローバルな視野を身に付けたい
- 知らないことを学ぶことが好き
- 他人とのコミュニケーションが苦にならない
- 計画を立てたり、調整したりするのが得意
- ビジネスパーソンとして成長をしていきたい
- 一生、使えるスキルを身に付けたい
- 仕事だけでなくプライベートも大切にしたい
いかがでしたでしょうか。思っていた以上にチェックがついた方も、そうでない方もいらっしゃるかと思います。それでは、貿易事務として活躍するための適性やチェック項目について、より掘り下げて紹介していきましょう。
語学力やグローバル志向に関する適性
「学生時代に留学をした経験がある」「子供の頃、外国に住んでいて外国語が話せる」。だけど「今の仕事では語学力が活かせる場がない」という人も多いのではないでしょうか。もし「語学力を活かした仕事をしたい」と考えているなら、うってつけなのが貿易事務という仕事です。貿易事務の仕事に就くと、ほぼ間違いなく、外国の人たちとのコミュニケーションが発生します。メールや書類のやり取りはもちろん、電話応対を任されることもあるでしょう。身に付けた語学力を存分に活かすことができます。
もしかすると、自分の語学力がビジネスの現場で使えるレベルか不安かもしれません。しかし、貿易事務の仕事をこなしていくことで、外国語によるビジネス文書の読み書きや、ビジネス会話が自然に身に付いていきます。「語学力にもっと磨きをかけて、世界をまたにかける仕事をしたい」と考えている人にとっては、格好のファーストステップにもなるはずです。
貿易事務につきものの海外とのコミュニケーションは、語学力を活かし、磨いてくれるだけではありません。さまざまな国の人と接することで「グローバルな視野が身に付く」というメリットもあります。貿易とは、簡単にいうと外国との商品の売買です。それぞれの国に、それぞれの商習慣や文化があり、日本の常識にとらわれていては、仕事になりません。仕事を通じて、文化の多様性や考え方の違いを実感し、受け入れることができるようになっていくでしょう。
また、安全かつ確実に輸出・輸入を行うためには、各国の政治や経済、天候などについても幅広く情報を収集している必要があります。政治、経済、天候の乱れによって、代金の支払いや商品の生産、輸送が滞ってしまう可能性もあるからです。遠い国の出来事が、日本で仕事をしている自分にも影響を与えることを肌で感じられることは、「世界の中の日本」という感覚を強くしてくれるはずです。
貿易実務に関する適性
貿易事務という仕事は、数ある事務職の中でもやや特殊な存在といえます。書類の作成や確認、手続きを主な業務としているという意味では他の事務職と変わらないのですが、実際には貿易実務の最前線という意味合いが強いのです。貿易事務の人が作成、確認する書類がなければ、品物の輸出・輸入はできませんし、貿易事務の人が輸出・輸入をする品物の配送や生産の手配までを担当することもあります。
活躍の場が広い貿易事務ですが、その分、覚えなければならない専門知識も大量にあります。「インボイス(Invoice・商業送り状)」「パッキングリスト(Packing list・梱包明細書)」「船荷証券(B/L・Bill of Lading)」「信用状(L/C・Letter of Credit)」などといった、貿易書類の作成、確認方法がその代表例です。また、貿易に関する法律知識も身に付けなければなりません。「知らないことを学ぶのが好き」というメンタリティを持っていないと、すぐにくじけてしまう可能性もあるでしょう。
実務面により深く触れていくならば、「他人とのコミュニケーションが苦にならない」「計画を立てたり、調整したりするのが得意」なことも重要な適性のひとつといえます。貿易事務の仕事では、メールや電話を通じて国内外の取引先と頻繁にコミュニケーションが行われます。また、出荷調整、納期調整など社内とのやり取りも多い仕事です。コツコツとひとりで仕事をしたいという人よりも、他人を巻き込んで仕事ができる人が向いているかもしれません。
仕事に対する考え方、キャリアに関わる適性
語学力と貿易に関する専門知識が必要、さらにコミュニケーション能力も求められると聞くと、「私には無理かも?」と不安になってしまうかもしれません。しかし、必要なスキルや知識のレベルが高いということは、それだけ現場で頼りにされる存在であるということ。自分のスキルや知識を存分に活かして、重要度の高い業務に携われることは、「ビジネスパーソンとして成長していきたい」と考える人には、大きな魅力となるはずです。
また、高い水準のスキルや専門知識を求められるがゆえに、貿易事務の仕事は、採用の際に経験者が優遇される傾向があります。つまり、一度経験を積んでしまえば、仕事探しに困ることが少なくなるということ。貿易事務の仕事は、商社、メーカー、フォワーダー、物流企業など、さまざまな業種で求められているものです。「一生、使えるスキルを身に付けたい」と考えて仕事を探している人には最適な職種といえそうです。
責任の重い業務を任される可能性が高い貿易事務という仕事ですが、もちろん事務職の一種ではあります。営業職や企画職などに比べると残業は少ない傾向があり、例えば、派遣社員として働く場合には、ほとんどの場合、毎日、定時に退社ができるでしょう。ビジネスのやりがいを感じながら、プライベートも充実させられる、そんな貴重な職種といえるかもしれません。
貿易事務として活躍するために欠かせないスキル・知識
貿易事務の仕事で活躍するには語学力と専門知識が求められると書いてきました。それでは、求められる語学力、専門知識とはいったいのどのようなものなのでしょうか。具体的に紹介していきます。
英語を中心とした外国語の読み書き・会話
貿易事務にとってもっとも重要な語学力は、ビジネス英語を読み書きできる能力・スキルです。「インボイス」「パッキングリスト」「船荷証券」といった貿易書類は、基本的に英語で書かれており、その内容を読みこなすことができなければ、貿易事務の仕事は務まりません。とはいえ貿易書類には定型のフォーマットがあります。英語に対して抵抗がないというレベルの語学力でも、意欲さえあれば徐々に仕事をこなせるようになっていくでしょう。
より高いレベルの語学力が求められるのは、募集要項に「コレポン業務」と書かれている場合です。コレポン業務とは、海外の取引先からの問い合わせや連絡にメールや電話などで対応する仕事のこと。英語を使っていちからビジネス文書を作成するスキル、相手の顔が見えない状態でもスムーズに英会話でコミュニケーションできるスキルが求められていると考えたほうがいいでしょう。
また、貿易事務の求人には多くの場合、必須条件、歓迎条件としてTOEICの点数が記載されています。入社後の業務内容によって条件となる点数は異なるのですが、500〜750点程度に設定されている場合が多いようです。TOEICにチャレンジして自分の英語力を確認し、勤め先を探すのもいいかもしれません。
貿易実務に関する専門知識
貿易の世界では、普段の生活では耳にしたことがないような言葉が飛び交っています。「インボイス」「パッキングリスト」「信用状」「船荷証券」といった貿易書類の名前はその代表例。そのほか、業務内容によっては「インコタームズ」「EXW」「FCA」「CPT」などといった貿易に関するルールや条件を示す用語も覚えていかなければなりません。
また、貿易には国内で行われるサービスや商品の取引きに比べて、高いリスクが伴います。商習慣の違いから商品の納入や代金の支払いが滞ったり、輸送中に事故に遭う可能性が高いからです。そこで必要になるのが数多くの書類と、輸出・輸入に特有の手続きや代金支払いの仕組み。さらには法規制や条約です。ここでは詳細な説明を避けますが、漫然と仕事をしているだけで、自然と身に付くような知識量ではありません。貿易事務として活躍したいのであれば、自学自習を続けていくことが大切です。
貿易事務に求められる一般的なスキルレベル
ここまでは、貿易事務に特有の性格的な向き・不向きや、必要とされるスキル・知識について詳しく紹介してきました。以降では、貿易事務という仕事に求められる、より一般的なスキルレベルについて紹介していきます。チェック項目は、「コミュニケーションスキル」「PCスキル」「作業の正確性・スピード」「スケジュール管理能力」「臨機応変な対応」の5項目で、求められるスキルレベルをグラフ化しています。レベルは1〜5の5段階評価になっており、3を事務職としての平均レベルとしました。数字が大きくなるほど高いレベルが求められると考えてください。
コミュニケーションスキル【求められるスキルレベル:5】
貿易事務の仕事は、国内・国外、社内・社外を問わず、多種多様な人と関わる仕事です。しかも国外の取引先とは、異なる文化を持つ相手に対して、日本語ではない言葉で意思疎通を図らなければなりません。非常に高いコミュニケーションスキルが必要な職種といえるでしょう。異なる文化を持つ相手とのコミュニケーションにおいては、認識の不一致が起きないようにすることが非常に大切です。逐一、文書に残すなどの工夫をしながら仕事を進める必要があるかもしれません。
また、たくさんの人と関わる仕事においては、率先して情報発信や仕事の割り振りを決めていく姿勢が欠かせません。受け身で仕事を待っていると、仕事が自分のところに溜まってしまい、業務が滞ってしまう可能性も。主体性を持って相手にかかわっていくことが、自分の業務負担を減らすということを覚えておくといいでしょう。
PCスキル【求められるスキルレベル:3】
貿易事務の仕事はほとんどがPCを使って行われます。メール、Excel(エクセル)、Word(ワード)といったオフィスワークで多用されるソフトをスムーズに操作できることが最低限のスキル条件となるでしょう。ただし、貿易書類をいちから作成するような機会は少ないはずです。貿易書類にはある程度決められた様式があるので、会社が用意したフォーマットに必要事項を入力したり修正したりするのが基本です。求められるPCスキルはさほど高くなく、平均的な事務職と同等程度と考えていいでしょう。「マイクロソフトオフィス スペシャリスト(MOS)」の資格を持っていれば、高い評価を得られるかもしれません。
また、勤め先によっては、売上や生産、配送などの管理のために、ERP(Enterprise Resource Planning)と呼ばれるような、業務管理システムを導入している場合があり、それぞれのシステムを覚えなければならないケースもあります。とはいえ、専門知識や複雑な操作が必要なものではないので、すぐにスムーズに扱えるようになるでしょう。
作業の正確性・スピード【求められるスキルレベル:3】
貿易事務の仕事には比較的高いレベルの「作業の正確性・スピード」が求められていると考えられます。その理由として挙げられるのは、書類上の手続きが非常に多いこと、たくさんの人間が関わる仕事が多いことです。例えば、品物を輸出するための通関手続きには、インボイス、パッキングリストなどといった書類を税関の求めに応じて提出する必要があります。この際、書類に不備、不足があると輸出の許可はもちろんおりません。
輸出の許可がおりなければ、書類の再作成、再準備が必要になるほか、輸送、納品スケジュールの調整が必要になるかもしれません。最悪の場合、自社や取引先に大きな損害を与えてしまうことも考えられます。自分の作成、準備した書類が、多くの人を動かしていることを自覚し、慎重かつスピーディに業務を遂行する姿勢が貿易事務の仕事には必要です。
スケジュール管理能力【求められるスキルレベル:4】
貿易事務の仕事にはスケジュール管理能力の高さも重要です。前に書いたのと同様に、貿易事務の仕事には多くの人が関わっているからです。スケジュールを正確に管理できるスキルは、人を動かす能力と言い換えてもいいかもしれません。例えば、6ヶ月後にアメリカに商品を届けなければならないとします。このとき貿易事務の人には、工場に対して生産スケジュールや在庫を確認し、港までの輸送手段、港での保管手段を手配し、さらに輸出用の船の予約を行うといった作業が発生するわけです。それぞれの担当者が無理なく、効率的に業務を遂行できるようなスケジュールを立案し、マネジメントするスキルが求められます。
臨機応変な対応【求められるスキルレベル:4】
貿易にはトラブルがつきものです。日本では天候が安定していたとしても、輸出元の国では異常気象が続いて農作物が生産が思うようにいかなくなっていたり、ハリケーンやサイクロンの影響で、船の出航がままならないというケースも珍しくありません。しかし、日本では取引先が商品の到着を待っています。
そんなとき、「商品が届かないのだから仕方がない」と諦めてしまっては、貿易事務として活躍するためには不十分です。もしかすると、倉庫にお客様が求めている商品の在庫が残っているかもしれません。他のお客様との調整をすることで、商品到着までの期間を乗り切れるかもしれません。貿易にはイレギュラーな事態が起こることは当たり前と考え、最善を尽くす姿勢が、貿易事務として活躍するために大切な要素・スキルとなります。
キャリアアドバイザーから一言コメント - ワンランク上の貿易事務へ
語学力と貿易についての専門知識が必要な貿易事務は、事務職の中では採用ハードルの高い職種となっています。しかし、初めは誰もが未経験者です。最初から貿易にまつわる商品やお金の流れ、法律、扱う書類について熟知している人はいません。今、貿易事務として活躍している人も、勉強を重ねて一人前になっていったのです。
貿易事務としてのスキルを習得し、一早く活躍したいと考えるなら、資格取得を目指してみるのもひとつの手。まずは「貿易実務検定 C級」からチャレンジしてみましょう。もし、試験に合格しなかったとしても、貿易実務や貿易実務英語について学んだ時間は無駄にはなりません。きっと毎日の仕事に生きてくるでしょう。
もし、貿易の世界でプロフェッショナルとして働き続けたいなら、「通関士」の資格を目指してみてもいいかもしれません。貿易実務の最高峰といえる資格で、合格率は9.8%と難関です。しかし、通関士の活躍できるフィールドは非常に幅広く、貿易関連の就職・転職先を探す際には、確実に有利になるでしょう。