医療事務に求められるスキル - 適性チェックリスト付き
マイナビキャリレーション編集部女性を中心として、医療事務は非常に人気の仕事となっています。しかし、人気の仕事だからといって、必ずしも自分に向いているとは限りません。人にはそれぞれに性格的な向き・不向き、得意・不得意があり、持っているスキルにも差があります。勉強をしてせっかく医療事務の仕事に就けたとしても、自分にとってやりがいのある仕事でなければ長くは続きません。
そこでこのページでは、自分が医療事務に向いているかを簡単に確認できるチェックリストを用意しました。さらに、医療事務の仕事で活躍するためのスキルについても詳しく解説しています。医療事務への就職・転職を考えている人はぜひ読んでみましょう。
目次
- 自分は医療事務に向いている?適性チェックリスト
- 医療事務の適性チェックリスト
- 患者さんやその家族とのコミュニケーションに関する適性
- レセプト業務に関わる適性
- 仕事に対する考え方、キャリアに関わる適性
- 医療事務として活躍するために欠かせないスキル・知識
- 診療・薬剤に関する医学的な知識
- 医療保険制度に関わる知識
- 医療事務として活躍するために必要なスキルレベル
- コミュニケーションスキル【求められるスキルレベル:5】
- PCスキル【求められるスキルレベル:3】
- 作業の正確性・スピード【求められるスキルレベル:4】
- スケジュール管理能力【求められるスキルレベル:3】
- 臨機応変な対応【求められるスキルレベル:4】
- キャリアアドバイザーから一言コメント - ワンランク上の医療事務へ
自分は医療事務に向いている?適性チェックリスト
まずは、自分の性格や仕事に対しての考え方が医療事務という仕事に適しているかをチェックしてみましょう。下に医療事務として働く上で大切な項目を8つリストアップしました。当てはまる項目が多いほど、医療事務という仕事にやりがいを感じ、長く活躍することができるはずです。
医療事務の適性チェックリスト
- 他人に感謝される仕事をしたい
- 他人の痛みや不安を理解し、共感できる
- 仕事をプライベートに持ち込まない
- 口が堅い・他人の秘密を守れる
- 記憶力が良い
- 知らないことを学ぶことが好き
- 自宅の近くで余裕を持って働きたい
- 一生、使えるスキルを身に付けたい
いかがでしたでしょうか。それでは、以下にて医療事務として活躍するための適性やチェック項目について、より掘り下げてご紹介します。
患者さんやその家族とのコミュニケーションに関する適性
「他人に感謝される仕事をしたい」と考えている人にとって、医療事務の仕事ほど向いている事務職はほかにないかもしれません。医療事務が他の事務職と大きく異なるのは、受付・会計といった患者さんやその家族と接する仕事を、主要な業務として任されている点です。そのため、診療を受け終えて帰る際、退院する際などに、患者さんやその家族から「ありがとうございました」「お世話になりました」と、直接、感謝の言葉をかけてもらえる機会が多いのです。「誰かのために役に立つ仕事をしたい」という想いがあるなら、医療事務という仕事に大きなやりがいを感じることができるでしょう。
患者さんやその家族と直接に触れ合う仕事であるがゆえに、性格上の向き・不向きも一定の割合で存在しています。第一は「他人の痛みや不安を理解し、共感できる」こと。このことは自分が病気にかかったり、ケガをしたときに病院に行った際のことを考えてみるとわかりやすいはずです。もし、病院やクリニックで最初に会う医療事務の人が、無表情で事務的な対応しかしてくれなかったらどうでしょう。「自分はこんなにつらい状況なのに、何も理解してくれていない」と、病院やクリニック自体に不信感を抱いてしまうかもしれません。
来院する患者さんは、多かれ少なかれ身体に不調を抱え、精神的にも不安定な状況に陥っています。また、患者さんの家族も、大切な人の身体を心配し、「早く診察してほしい、早く治ってほしい」と願っているはずです。こういった痛みや不安を理解したうえで、ひとりひとりに合わせた応対ができるホスピタリティが医療事務という仕事には求められています。
ただし、患者さんやその家族に共感しすぎてしまうと仕事自体がつらくなってしまう可能性もあります。精神的に不安定であるために、患者さんやその家族が理不尽な要求をしてくることもあるようです。また、病院で働く以上、死という非常に精神的な負担の大きい場面に接するケースも考えられます。そんなときに、すべての人に対して感情移入をしてしまうと、仕事から受けるストレスが大きくなりすぎて、長く続けられなくなってしまうのです。「仕事をプライベートに持ち込まない」という、割り切りの良さがあったほうが、医療事務という仕事には向いているといえるでしょう。
患者さんとの関係性でもうひとつ重要なのは「口が堅い・他人の秘密を守れる」ということ。誰がどのような病気にかかっていて、治療を受けているのかという情報は、非常に繊細な個人情報です。勝手に他人に漏らしてはいいものではありません。口が軽かったり、仕事で得た情報をプライベートで他人に話したりしてしまうような人には向いていないでしょう。
レセプト業務に関わる適性
医療事務の仕事にはレセプト業務という重要な領域があります。簡単にいうと、患者さんが受けた診療の内容をまとめた「レセプト(診療報酬明細書)」というものを作成し、その内容に応じて患者負担以外の診療報酬を請求する仕事です。このレセプト業務をスムーズに進めるためには、診療報酬や医療に関する専門的なスキル・知識だけでなく、「記憶力が良い」「知らないことを学ぶことが好き」という要素が大切です。
レセプトを作成する際には、通常、「レセコン(レセプトコンピューター)」と呼ばれるレセプト作成用のパソコンソフトを使用します。外来の患者さんの場合は、来院のたびに診療内容をレセコンに入力し、そのデータを基にレセプトを月に1度作成・提出するという流れが一般的です。
記憶力が必要になるのは、レセコンへの診療内容の入力時。多くの場合、診療内容を日本語でそのまま入力するのではなく、診療内容に応じた英数字(コード、品番などと呼ばれる)を使って入力を行います。このとき、会計用伝票やカルテに書かれた診療内容を見て、それに合うコードや品番を探してという作業を繰り返していては、時間がかかって仕方がありません。診療内容を見ただけですぐにコードや品番を入力できる記憶力が必要になるのです。
知らないことが学ぶことが好きな人が向いている理由は、診療報酬に関する制度が、2年に1度改定されるからです。改定による変更点は膨大な量に及ぶため、すべてを覚えなおすことは困難ですが、自分がかかわっている業務に関する変更点は熟知しておく必要があります。新しい知識を吸収することをおっくうに思うような人は、変化の多い医療事務の仕事をこなしきれなくなる可能性があります。
仕事に対する考え方、キャリアに関わる適性
医療事務の仕事に就くと多くの場合、病院やクリニックなどの医療機関で働くことになります。ここで注目したいのは、病院やクリニックの多くが住宅街の近くに立地しているということです。一般事務や営業事務など、オフィスで働く事務職の場合は、電車や車での通勤を余儀なくされることが多いのですが、医療事務の場合は自宅の近くにある病院やクリニックで働くという選択肢があるのです。
実際に、自宅近くの病院やクリニックで勤めて、通勤は自転車、休憩時間は自宅で過ごすという働き方をしている人も少なくありません。子育てや家事で忙しく「自宅の近くで余裕を持って働きたい」と考えている人にはうってつけの仕事といえるかもしれません。
また、医療事務は医療や社会保険制度に関する専門的なスキルや知識を求められる仕事です。身に付けなければならないスキル・知識が多い分、採用の際には経験者が有利になる傾向があるようです。言い換えるなら、一度、医療事務の仕事を経験しておけば、将来的に仕事に困る可能性が減るということ。「一生、使えるスキルを身に付けたい」と考えて仕事を探しているなら、チャレンジして損はない職種といえるでしょう。
医療事務として活躍するために欠かせないスキル・知識
ここまでの内容で少しだけ触れましたが、医療事務の仕事の中にはレセプト作成のような、医療行為そのものや医療保険制度に関する専門的なスキル・知識が求められる業務が存在します。続いては、医療事務として活躍するために必須となるスキル・知識について紹介していきます。
診療・薬剤に関する医学的な知識
医療事務の仕事には無資格でも就くことが可能で、医療行為そのものにかかわることはありません。しかし、医師や看護師が行う診療や処置の内容や、病気・ケガの名前や症状、処方される薬の名前、効果・効能について最低限の知識を身に付けておく必要があります。なぜなら、こういった知識がないと、医療事務として働いている人にとって大きなウエイトを占める、レセプト業務をスムーズにこなせないからです。
レセプト業務と一口にいっても、その中にはさまざまな作業があるのですが、医療事務の人が行う仕事の中心となるのは「レセコンへの入力」と「レセプト点検」です。「レセコンへの入力」は、実際に行われた診療や検査が記載された会計用伝票やカルテなどを基に、その内容をレセコンに入力する仕事。「レセプト点検」は、レセコンに入力されたデータを基に1ヶ月ごとに作成するレセプトが実際の診療内容などと合致しているかを確認する仕事です。
「レセコンに入力したり、レセプトの内容を確認したりするだけなら、医療に関する知識は必要ないのでは?」と思ってしまいがちなのですが、実はそうではありません。医師や看護師は目の前の患者さんの診療や処置に集中しており、逐一、行った診療や使用した薬を記録しているわけではありません。会計用伝票やカルテなどに記載漏れや誤記載がある可能性があるのです。
こういった、記載漏れや誤記載があると、診療報酬が病院へと正しく支払われなくなってしまいます。レセコンへの入力前、診療報酬請求を行う前に、会計用伝票やカルテの誤りに気づき、指摘するのも、医療事務の役割のひとつ。「この病名なら、このような診療を行っているのでは?」「この診療をしたときには、この検査と薬を使っていますよね?」などと、医師や看護師に問い合わせをするために、一定レベルの医学的な知識が必要になるのです。
医療保険制度に関わる知識
医療事務として活躍するためには医療保険制度について熟知していることも必須となります。医療保険制度は、非常に簡単に表現すると「医療費に関して個人と国がどの程度の割合で負担をするか」を定めたものといえるでしょう。例えば、小学生から69歳までは「個人が負担する医療費は、実際にかかった医療費の3割」と定められています。これも医療保険制度によるもの。つまり、医療事務の人が毎日行う、会計業務のベースとなるものなのです。医療保険制度を理解していないことは、自分の仕事の根幹を理解していないことといっても過言ではありません。
また、医療事務の仕事をしていると、医療保険制度について案内や説明をしなければならないケースもあります。なぜなら、医療保険制度には、個人の医療費負担を軽減するための制度や給付金がたくさんあるからです。代表的な例が「高額療養費制度」。これは個人が1ヶ月に負担する医療費の上限を定めたもので、実際にかかった医療費が数十万円であったとしても、医療保険の適用範囲内の診療であれば、一般的な会社員の場合、1ヶ月に8〜9万円の負担に抑えることが可能になります。
そのほか病気やケガで一定期間以上、働けなくなってしまったときに給付金を受け取れる「傷病手当金」、出産のために働けなくなって十分な収入が受け取れなくなったときに給付金を受け取れる「出産手当金」といった仕組みもあります。こういった、患者さんにとって有益な制度を必要に応じて適切に案内し、説明するためには、医療保険制度への理解が欠かせません。
医療事務として活躍するために必要なスキルレベル
ここまでは、医療事務という仕事に特有の適性やスキル・知識について紹介してきました。次により一般的なスキルが、他の事務職と比較してどの程度、必要とされているかをチェックしていきます。チェック項目は、「コミュニケーションスキル」「PCスキル」「作業の正確性・スピード」「スケジュール管理能力」「臨機応変な対応」の5項目で、求められるスキルレベルをグラフ化しています。レベルは1〜5の5段階評価になっており、3を事務職としての平均レベルとしました。数字が大きくなるほど高いレベルが求められると考えてください。
コミュニケーションスキル【求められるスキルレベル:5】
医療事務という仕事には、非常に高いコミュニケーションスキルが求められると考えましょう。一般的な事務職においては、「相手の要望を汲み取り、適切な回答ができるか」がコミュニケーションスキルを測る物差しになります。しかし、医療事務として活躍するためには、「患者さんやその家族の不安を和らげる」というワンランク上のコミュニケーションを求められるのです。安心感を与えられる笑顔、専門的な用語をかみ砕いて伝えられるボキャブラリーなどが必要になります。
高いコミュニケーションスキルを発揮することは、患者さんやその家族のためだけでなく、病院の経営のためにもなります。病院やクリニックは医療法によって、広告ができる内容に大きな制限を受けています。そのため、来院者数を増やしたり、来院者からの評価を上げたりするためには、医師や看護師による医療行為の質の高さはもちろんのこと、医療事務として働いている人の応対の質の高さも重要。「病院の顔」と呼ばれ、医療事務に高いコミュニケーションスキルが求められる背景には、経済的な理由もあるのです。
PCスキル【求められるスキルレベル:3】
医療事務の仕事に就くと、毎日使用することになるのが「レセコン(レセプトコンピューター)」と呼ばれるレセプト作成用のソフトです。レセコンは医療事務の仕事に特化したソフトで、患者さんの情報や診療内容などを入力するだけで、外来会計用の領収書や診療報酬請求に使用するレセプト(診療報酬明細書)を一括で作成することができます。他の事務職で使用されることはなく、医療事務の仕事が未経験の人は、いちから操作を覚える必要があります。
とはいえ、操作自体は簡単なもので、基本的な作業は患者さんの情報やドクターの情報、傷病名、実際に行われた診療内容などを会計用伝票やカルテに沿って入力するだけ。すぐに操作方法を覚えることができるでしょう。Word(ワード)やExcel(エクセル)、PowerPoint(パワーポイント)を使った仕事が発生することもありますが、医療事務のメイン業務となることはほとんどありません。一般的な事務職と同等もしくはやや低いレベルのPCスキルでも医療事務の仕事は十分にこなすことができるでしょう。
作業の正確性・スピード【求められるスキルレベル:4】
医療事務の人が行うレセプト業務には比較的、高いレベルの「作業の正確性・スピード」が求められます。病院やクリニックの収入の大部分を占める診療報酬は、提出したレセプトが適正なものでなければ、審査支払機関から支払いを受けることができません。レセプトの内容に記載漏れや誤記載があると、「返戻」といってレセプトを差し戻されてしまい、再度、審査を受けなければならないのです。
近年はレセコンの機能が進化していて、傷病名に対応する診療内容が記入されていなかったり、明らか に間違った診療内容や薬の名前が入力されていたりすると、注意を促してくれるのですが、レセコンのチェック機能も完璧なものではありません。医療事務の人による、正確な入力と点検作業が欠かせないというのが現状です。
また、レセプトの提出は毎月10日までに行わなければならないと決められています。1日から10日までの間は、日常的な受付・会計業務に並行してレセプト点検業務が発生するため、来院患者数の多い病院では非常に忙しくなります。複数の作業を効率的かつスピーディに進めるスキルも重要です。
スケジュール管理能力【求められるスキルレベル:3】
医療事務では、他部署や他社とのスケジュール調整が必要になったり、他人のスケジュールをコントロールしなければならなくなったりする場面はあまりありません。基本的には、自分が担当している仕事を締切りまでに終わらせるための、自己完結型のスケジュールを管理できるスキルがあればOKです。
例えば、「この患者さんは今月はもう来院しないだろうから、レセプト点検は先に済ませておこう」などと、自分自身で作業を先読みし、できるときにできることをするという姿勢を持っていれば、スムーズに仕事をこなせるでしょう。
臨機応変な対応【求められるスキルレベル:4】
医療事務の仕事をすると、特に患者さんやその家族とのコミュニケーション・接遇をするシーンで、臨機応変に対応するスキルが強く求められます。患者さんとその家族が抱えている苦しみや痛みは、千差万別。しかも患者さんの年齢もさまざまです。画一的な対応をしていては、病院やクリニックに対して信頼感を持ってはもらえません。ひとりひとりに合わせて適切な対応を取る必要があるのです。
例えば、20代の患者さんとお年寄りの患者さんがいたときに、両者に対して同じ言葉づかい、同じ会話のスピードで対応するのが適切でしょうか。お年寄りに対しては、よりわかりやすい言葉を使用し、ゆっくりと大きな声で会話をする必要があるかもしれません。体調がとても悪そうな患者さんを前にして、ただ受付を済ませるだけで十分でしょうか。横になって休憩できるよう案内するほうが適切かもしれません。医療事務の仕事には患者さんひとりひとりに寄り添うホスピタリティが求められます。
キャリアアドバイザーから一言コメント - ワンランク上の医療事務へ
ここまでご紹介した適性やスキルの内容で、自分が医療事務という仕事に向いているか、医療事務という仕事に就いたときに力を発揮できるかをある程度、理解できたはずです。もし、医療事務としてより高いレベルを目指したいなら、資格の取得にチャレンジしてみるといいでしょう。
医療事務としてすでに働いている人の中には、「医療事務の資格なんて現場では役に立たない」と考える人も多いかもしれません。確かに、医師や看護師と違い、医療事務になるため必要な資格というものは存在しません。資格がなくても十分に医療事務として活躍することができます。しかし、資格取得そのものに意味があるのではなく、資格取得をするまでの過程には大きなメリットがあるのです。
それは、医療事務の現場で必要となるスキルや知識を、体系的に整理し、アップデートできるということ。現場で身に付けたスキルや知識をしっかりと整理しておけば、日常的な作業に応用が利くようになりますし、後輩が入ってきたときの指導にも役立ちます。また、診療報酬制度は2年に1度改定されています。資格取得のために勉強することで、医療保険制度や診療報酬制度についての知識を最新の状態に保つことが可能になります。
そのほか、医療機関によっては資格を持っていることによって手当が支給さることもありますし、就職や転職の際に資格が役に立つことも考えられます。医療事務として長く活躍していきたいなら、一度はチャレンジしてみるといいでしょう。